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駆け引きアンソロジー「ステルメイト」感想です

駆け引きアンソロジー「ステルメイト」
主催:藍間真珠さん


男女の非恋愛な駆け引き、腹の探り合いをテーマとしたアンソロジーです。今回私も一作寄稿しております。
ほんとうに様々な駆け引きが詰まっておりました…!ぜひネタバレなしでお読みいただきたいアンソロジーでもあるので、なるべくネタバレにならないような感想を書ければ…良いな…!(といいつつほのかなネタバレもありそうな予感…)
あ、お手に取っていただいた方はぜひカバー下もご覧頂きたく…!

という訳で、作品の簡単な紹介文と感想をしたためさせて頂きます。なお、感想の語彙力は鍛え途中なのでありません…()

「灰色のレイニー」土佐岡マキさん
美術館を訪れていたハルは、会いたくない人物――雨と再会してしまう。過去、ただ共に過ごしていただけでない、因縁めいた関係のふたり。雨が持ちかけてきた話に、ハルは「勝負」を持ちかける。ふたりの駆け引きの行方は――。

ふたりの駆け引きがはじめから最後までみっちりと詰まっていて、ふたりのやりとりにドキドキしてしまいました。駆け引きのなかに、ふたりのドライになりきれない感情がにじみ出ているように感じられて…一見すると雨が有利に事を進めているように感じられるのですが、ハルさんのひとことでそれがひっくり返されるのが好きです。
最後のハルさんとのやりとりで、雨の心が動くのか…ドライだけどドライになりきれない、そんなお話でした。

「北の森に梟が鳴く」藤原湾さん
アホトニク国とジン民族との面会。アホトニクの王子サヴァの前にやってきたのは、ジン民族のキョウであった。ジン民族の代表として現れたのは女性で、困惑するサヴァにキョウはサヴァの身分を口にする――。

凛としているキョウさんがめちゃくちゃかっこいいのです。一見穏やかな会話の底に流れる、互いの国の利益を狙う独特の冷たさがたまりません。これぞ権謀術数の駆け引きですね!
めちゃくちゃかっこいいキョウさんですが、彼女の話術に、深みにとらわれることなく、話を持ち出すサヴァさんもこれまたクールでかっこいいのです。
タイトルの意味を知ったラスト、知恵をめぐらせる梟たちのまなざしが浮かんでくるような、そんなお話だなと思いました。

「ラブラドライトの献身」志水了

寄稿するにあたって非恋愛の駆け引きとお聞きし、ストレートにカッコイイと思えるお話を書こう! 事件ものだ! など考えて近未来の警察SFものへ辿りつきました。
とは言っても、現在の警視庁と立ち位置はあまり変えずに書いてみたり。
ちなみにネタバレなんですが、椿原は小さい頃に事件に巻き込まれたとき、捜査にあたった公安の警察官に引き取られ、大学課程まで飛び級で学んだあとに警視庁の試験を受けたという感じです。なのでエリート街道邁進中。光美はネットで高卒課程まで学んで、ネットの世界で遊んでいたらスカウトされて警視庁の試験を受けている設定。だったり。

「スケジュール・パズル」森村直也さん
火曜日の夜に届いた一通のメール。野津と岩藤の二人の間で繰り広げられたとある駆け引きに負けた岩藤はメールを確認する。それはさらなる駆け引きの始まりだった――。

お仕事の駆け引きをめぐるお話ですね。互いの立場と選ぶべき手段、そこに天秤に掛けられるのは早く帰りたいという思い。わかります。とてもわかりますとも。
野津さんも岩藤さんもそれぞれの事情を抱えていて、夜中、ひとりでの帰りたいという叫びが切ないっすね…わかりますとも(深く頷き)
ふたりそれぞれの事情をさらりと明るみにしながらも、駆け引きの収束に向かっていく場面はほっとひと息つけるような、爽やかさを感じさせるような、すっきりとした読後感でした。ふたりの独特の距離感が素敵です。

「青髭に捧げる狂詩曲」立田さん
軍人であるらしい新しいオーナーのもとにむかえられた「わたし」は、オーナーの妻のための演奏を望まれる。決められた時間を演奏して暮らす日々のなかで、オーナーにまつわる話を聞くことになるが……。

静かなお話のなかに流れる音楽に、そして「私」がなにものなのかを知り、そこにある駆け引きに気が付くと、少し怖さをも覚えるのですが、「私」がどんな想いで演奏をしているのかと思うとなんだか切なくなります。お話全編を通して「私」がとても不思議な存在で、それがお話独特の美しさを形作っているような、そんな感覚を覚えました。

「(RE)START」 汐江アコさん
作家のココノエムツキのもとに新しい担当が紹介される。新しい担当、小笹と面会した数時間後、彼女から電話が掛かってくる。彼女は夜も更けた時間に、今から仕事場を見たいと申し出てきて――。

ぐいぐい押してくる小笹さんとココノエさんのやりとりと駆け引きにほっこり、ニコニコと微笑ましい気持ちになります。そして小笹さんがぐいぐいと押してくる「理由」にココノエさんが気が付いたときもさらにほっこりしつつ、しんみりしてしまいました。いいですね~。さらにその後のふたりの駆け引きも微笑ましくて、思わずエールを送りたくなる、そんなお話でした。

「色利かし」藍間真珠さん
アサンドロは、上司ロガンツォの婚約者であるグリィタが住む「魔女の小屋」を訪れる。色の魔術師と呼ばれる染師であるグリィタ。仕事一筋であるロガンツォの婚約をなぜ受け入れたのか、人々の心を掴む彼女の色の秘密は何か。それらを探ろうとするアサンドロだったが――。

美しい光景のなかで繰り広げられる、穏やかな会話。当たり障りのない会話のなかに込められた駆け引きにドキドキしてしまいますね。アサンドロさんの視点で進むので、グリィタさんの秘密がとても気になってしまうのですが、グリィタさんも穏やかなやりとりでアサンドロさんのことを探っているのだなと思うと、切なさもあり、これまたドキドキしてしまいます。
とあるきっかけから暴かれる秘密、そしてその後のふたりのやりとりがとても好きです。お二人の今後が気になりますね…!

このお話がアンソロジーの最後にくるというのが本当にすごいんですよ!色利かしまで読んで、灰色のレイニーを読むと、違うお話なんですが、つながりを感じられるという…!すごい…!

「駆け引き」というテーマでもさまざまな駆け引きがぎゅっと詰められたアンソロジー、どのお話もとても面白かったです!
感想をかきつつまた違うタイプの駆け引きのお話が書きたいな~なんて創作意欲もわいてくる今日この頃でした。

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